養護者とは、「高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外のもの」とされており、金銭の管理、食事や介護などの世話、自宅の鍵の管理など、何らかの世話をしている者(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等)が該当すると考えられます。また、同居していなくても、現に身辺の世話をしている親族・知人等が養護者に該当する場合があります。
養護者による高齢者虐待とは、養護者が養護する高齢者に対して行う次の行為とされています。
ⅰ 身体的虐待
:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ⅱ 介護・世話の放棄・放任
:高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人による
虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。
ⅲ 心理的虐待
:高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ⅳ 性的虐待
:高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
ⅴ 経済的虐待
:養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること
高齢者虐待の捉え方
高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を上記のように定義していますが、これらは、広い意味での高齢者虐待を「高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態や生命、健康、生活が損なわれるような状態に置かれること」と捉えた上で、高齢者虐待防止法の対象を規定したものということができます。
また、地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の一つとして、市町村に対し「被保険者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他の被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う事業」の実施が義務づけられています。
こうしたことから、市町村は、高齢者虐待防止法に規定する高齢者虐待かどうか判別しがたい事例であっても、高齢者の権利が侵害されていたり、生命や健康、生活が損なわれるような事態が予測されるなど支援が必要な場合には、高齢者虐待防止法の取扱いに準じて、必要な援助を行っていく必要があります。